松江工業高等専門学校による計測データの検証会議

於:安部榮四郎記念館


今年度5月・6月・7月・8月・10月・11月と6回測定しました。

主に紙の厚さ・重さ・紙漉き道具(簀桁)の動き・その時の気温・湿度など環境も対象に測定を行ってもらいました。

被験者と工専の先生・学生がデータに基づき、月ごとに比較検証しました。すでに安部信一郎・紀正兄弟のデータは測定済みです。

後継者である被験者・山野は、原料から紙漉き・乾燥までを2年修行後、6年あまり工房で原料処理と紙料作り(紙漉き準備のすべての仕事)を行っていたので、測定日に少し練習をして漉くというデータ記録となりました。修行年数はまだ浅いが、紙を漉く動作にかかる時間・動きは、常に一定し熟練したものと変わりなかった。ただ紙の厚さ=重さが月により8gとばらつきが大きく指摘がありました。

信一郎・紀正は月ごとの測定はしていないが、紙の重さに関しては0.4~0.7gとほとんど変わらず漉くことができていた。

何が要因かデータより検証し、紙漉きに必要不可欠なトロロアオイの粘度が関係するのではないかということが問題点として上がりました。特に夏場の暑さによる粘度の低下で和紙が厚くなることも予想でき、環境要因と気温・湿度、及び被験者の体感(漉きやすさ・漉きにくさなど)など職人の勘所も数値化できるようです。

余談ですが、安部榮四郎が言っていた言葉を思い出しました。大正12年から昭和13年島根県工業試験場紙業部で技師の助手としてパルプ混入や、着色などの研究に加わっていたとき「どのような手仕事であろうと、どの道を歩もうと、基礎的な教育と科学的な研究を持ってしなければいけない。工業試験場での技師との交わりと、その時経験した試験研究が民芸紙を作る上に自信を持たせてくれ、正倉院の紙の調査にも役立った。」

今頃になってとも思いますが、後世に伝えるための伝承方法は工芸部門にとって深刻な問題です。原材料から製作工程は映像で撮れても肝心な人の感覚は数値化が難しかった。しかし将来もっと科学が進むと人でなくても手漉き和紙ができると思います。大事なことは日本の文化である伝統工芸が無くなっていく事実をどう思うか、個人で引き継いでいくことが困難な時代に直面していることを多くの人が知らないことです。和紙でなくても良いと言えばそれまでですが、これまで素材として日本の文化、芸術を支えた手漉き和紙をなくしてはいけない。多くの文化財の修復にも必要となってくる時が必ず訪れます。


測定値の検証会議